自己破産をしたら退職金は処分される?手元に残るケース残らないケース

自己破産時の退職金について

自己破産をした場合に、退職金はどうなってしまうのでしょうか?

自己破産を検討している方の中には、退職金をこれからもらう予定の方や、すでに退職金を受け取っている方もいらっしゃるでしょう。

また、自己破産後すぐに退職する予定はないけれど、退職金制度がある会社に勤めていて、何かしらの影響が出てしまわないか心配な方もいらっしゃるかと思います。

こちらの記事では、自己破産をしたら退職金にどのような影響が出てくるのかを解説していきます。

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この記事の監修者

弁護士法人 天音総合法律事務所 正木 絢生 (第一東京弁護士会所属)

退職金は財産として扱われる?

退職金は自己破産をすると処分の対象となってしまうのでしょうか?

結論として、自己破産をすると退職金の一部または全部が財産とみなされ、財産処分の対象となります

理由は、自己破産が借金をゼロにできる一方で、生活に必要な最低限度の財産を除き原則として処分しなければならず、退職金も財産の一部であると考えられるからです。

以下では、どのようなケースだと退職金の一部、または全額が財産として処分の対象となってしまうのか詳しく説明していきます。

破産をする際に退職金の有無を申告する必要がある

破産者は自己破産の申立ての際に、すべての財産を資産目録に記載して裁判所に申告する必要があります。

この資産目録には、現金や給与、預貯金や保険、不動産や車などといった項目のほか、退職金請求権、退職慰労金の記載も義務付けられており、すでに支給されている退職金だけでなく、支給前の退職金についても申告が必要です。

なぜ、支給前の退職金についても申告が必要かというと、退職金は給料の後払いのような性質を持つとされており、自己破産前からすでに発生している労働者の財産としてカウントされるからです。

自己破産手続きの後に得た財産(新得財産)は処分の対象になりませんが、退職金は新得財産としては扱われません。

ただし、支給前の退職金は全額が処分の対象となるわけではなく、退職金支給見込み額の一部分のみ財産として換価されることになります。

退職金の支給時期によって処分の対象となる条件が変わる

退職金が財産としてカウントされる際に、支給時期によって処分の対象となる条件が変わってきます。

こちらでは3つにわけて説明していきます。

すでに退職して退職金を受領済みの場合

勤務先を退職して、すでに退職金が支払われている場合、その退職金が金銭として現金保管されているのであれば現金として、預金や貯金口座に入っていれば預金や貯金として扱われます

そのため、退職金を含めた現金が99万円以上、預貯金が20万円以上ある場合は、処分の対象となります。

自己破産手続中に退職予定の場合

退職後、まだ退職金を受領していない、もしくはまもなく退職予定で退職金が支給される可能性が高い場合は、退職金の額を確定しやすいため、退職金の4分の1が財産として評価されます。

退職金の4分の1が財産と評価される理由ですが、退職金は、退職後の生活を保障するためのもので、日本の法律上、このような生活に直接的に関わる財産は、強制執行による差し押さえであっても、差押金額の上限は4分の1までとするように定められているからです(この金額を超えて差し押えをした場合、差し押さえられた本人の生活に支障が出てしまう可能性があるため)。

退職予定はない、もしくは退職時期がまだ先の場合

すぐに退職金を受け取る予定がない場合は、原則として、退職金見込額の8分の1が財産となります。

退職時期が先になる場合、退職金を確実に受領できるかは不明であり、退職金が支払われた際に回収することも困難であることから、退職金支給見込額の8分の1を財産として評価する運用が取られています。

処分されない退職金もある

退職金の中には、自己破産をしても処分の対象とならないケースがあります。

たとえば、中小企業退職共済制度などの共済から支払われる退職金や、確定拠出年金は処分の対象とならず、自由財産として評価されます。

処分の対象にならない退職金

自由財産として扱われる退職金

内容

中小企業退職共済制度による退職金

自社では退職金の支払いが難しい中小企業のための退職金制度。

小規模企業共済制度による退職金

中小機構が運営する経営者や個人事業主などのための積立方式の退職金制度。

確定拠出年金

私的年金の一種で年金受給者の拠出する金額が確定しているタイプのもの。
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)がある。

確定給付企業年金

私的年金の一種で将来受け取る年金額が確定しているタイプのもの。

厚生年金基金

厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する全ての人を対象とした年金。
老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金がある。

中小企業退職共済制度や小規模企業共済制度は、自己破産手続き上の退職金とは異なり、自由財産とされているため処分の対象にはなりません。

また、確定拠出年金や確定給付企業年金、厚生年金は、自己破産した際でも処分の対象とならない自由財産の中の差押禁止財産(差押禁止債権)にあたるため、自己破産によって没収されることはなく、60歳になったら支給されます。

自己破産後しばらく退職の予定はない

自己破産をしても、その後もしばらく退職する予定はないという方も多いでしょう。

退職をしない方は、将来、退職金が支払われる見込みはあったとしても実際に退職金が手元に入ってくるのは先になりますし、確実に受領できるかは不明でしょう。

このようなケースで、退職金がどのように財産として評価されるのかについてや、処分の対象の範囲について解説していきます。

退職金として支給予定の8分の1にあたる金額が財産にあたる

「退職を考えていない」、「退職がまだ先」など、すぐに退職金を受け取る予定がない場合には、退職金支給見込額の8分の1が個人の財産として評価されることになります。

支給予定の8分の1が20万円以下なら退職金は全額処分されない

退職金の支給予定額の8分の1が20万円以下であれば、退職金は処分の対象となりません

自由財産(処分されない生活に必要な財産)として退職金を全額残すことができます。

たとえば、退職がまだ先の方で退職金の見込み額が600万円であれば、600万円の8分の1の75万円が処分の対象となりますが、退職金の見込み額が160万円以下であれば、160万円の8分の1は20万円であることから、退職金を全額残すことができます。

退職金見込額証明書で金額を証明する

では、具体的に退職金の見込みについて、どのように裁判所に証明していくのでしょうか?

受け取り前の退職金は、その見込み額を計算した退職金見込額証明書(退職金計算書)を、原則として勤務先に作成してもらうことになります。

退職金見込額証明書は勤務先の総務部などで発行してもらえるでしょう。

ただし、発行に際してなぜ証明書が必要になるのか聞かれることも多いです。

自己破産の手続きで必要だと勤務先に伝えたくない場合は、「住宅ローンを組むためにローンの審査で必要だから」などと回答する手を使いましょう。

それも難しければ、就業規則の退職金規定に基づき、自分で退職金見込額を計算する方法もあります。

勤務先の退職金規定と退職金見込額計算の書類を一緒に提出すれば、裁判所も受理してくれるでしょう。

自己破産後まもなく退職の予定

自己破産手続きをする方が間もなく退職する予定で、退職金が支給される可能性が高い場合は、退職金の4分の1が財産として扱われることになります。

すでに退職したけれど、まだ退職金を受け取っていないケースも同様です。

退職金の4分の1が財産となり、処分される

直近で退職した後に自己破産手続きをする場合や、破産手続き中に退職する場合、退職金の4分の1が財産として評価され処分の対象となります。

もっとも、4分の1の金額が20万円以下であれば処分の対象とされません

つまり、退職金が80万円以下であれば、4分の1は20万円以下となるため処分されずに済みますが、80万円を超える場合には4分の1の金額が処分の対象になります。

例として、退職金が500万円の場合には、4分の1の金額は125万円であるため、125万円が処分の対象となります。

すでに退職金を受け取っている

すでに退職をして退職金を受け取っているのであれば、退職金としてではなく預貯金または現金としての取り扱いになります。

預貯金または現金としての取り扱いになると、財産としてどのように評価されるのか解説します。

他の現金と同じように財産として扱われる

退職金をすでに受け取っている場合には、その退職金は預貯金や現金と同じように扱われます。

自己破産の申し立ての時点で20万円を超える預貯金や現金があると、自己破産の中でも管財事件として扱われ、その他の財産とあわせて99万円を超えた分は処分の対象となります(管轄の裁判所によって金額は異なります)。

管財事件では、別途、裁判所に納める予納金などが必要になります。

自由財産の拡張を申し出れば退職金を守れる?

退職金を、処分の対象とならない財産(自由財産)として認めてもらう方法がないか考える人もいるでしょう。

退職金は本来、退職をした後の生活保障のためのものなので、法律で4分の3は守られていて、処分の対象となるのは、残りの4分の1(すぐに受け取らない場合は退職金の8分の1)です。

ただし、退職金の4分の1(または8分の1)とほかの財産を合わせた合計額が99万円以下であれば、自由財産として認められ、退職金を処分せずに済む可能性があります

このことを自由財産の拡張といいます。

注意点として、退職金における自由財産の拡張はどのようなケースでも認められているわけではありませんので、詳しくは弁護士に相談する際などに確認しましょう。

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任意整理や個人再生だと退職金はどうなる?

自己破産以外の債務整理の手段を選択した場合、自己破産と比較して退職金の扱いに差は出てくるのでしょうか?

こちらでは任意整理や個人再生という債務整理の方法を選択した際の退職金の取り扱いについて解説していきます。

任意整理では退職金に影響はない

任意整理とは、裁判所を通さず債権者と直接交渉をして将来利息のカットや遅延損害金をカットしてもらう方法です。

原則3年~5年程の長期分割で返済をしていくことができます。

裁判所を介さず進められる手続きなので、退職金やその他の財産を申告したり処分したりする必要はありません。

任意整理であれば退職金への影響はないと考えて良いでしょう。

個人再生では処分が必要なこともあります

個人再生とは、裁判所を通じて借金を一定額に減額圧縮し、残った借金を3年~5年程度で返済をしていく方法です。

任意整理と異なり、現在持っている財産の総額以上の返済をしなければならないという原則があるため、高額の退職金を受け取っている場合は財産総額が膨らみ、個人再生をした後の月々の返済額が上がる可能性があります。

ちなみに、個人再生は自己破産と同様に、すでに退職金を受け取っている場合は全額、退職が決まっている場合には退職金支給見込額の4分の1、退職予定がないケースなどの場合には退職金支給見込額の8分の1が財産として扱われることになります。

自分の退職金がどうなるのか詳しくは弁護士に相談

自己破産の際に退職金への影響は支給タイミングによって異なります。

また、自己破産では退職金見込額証明書の用意や財産目録の用意といった書類の準備も必要になってきます。

手続きを検討するにあたって不安や疑問がある人は弁護士への無料相談を利用し、「各種書類をどのように準備すればよいのか」、「会社に知られないよう手続きを進めるにはどうすればよいのか」、「退職金を少しでも多く残すにはどうしたらよいのか」などを確認してみてください。

「借金の減額診断」から弁護士に問い合わせることができますので、気になることがあれば、お気軽にご利用ください。

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