奨学金を返せない時は自己破産をしても良い?破産のリスク、事前にできること

破産のリスク、事前にできること

「奨学金の返済が苦しい」、「奨学金の負担を軽くする方法はないのだろうか?」など、借金の悩みを抱えている人の中には奨学金の返済に困った際の対処方法を知りたい方も多いのではないでしょうか。

この記事では奨学金返済に悩む方に向けて、「自己破産をすべきか」、「その他の債務整理の方法を選択すべきか」、「債務整理をする前にできることはないのか」など、奨学金返済に困ったときにどのような対処をすればよいのか、ケース別に解説をしていきます。

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この記事の監修者

弁護士法人 天音総合法律事務所 正木 絢生 (第一東京弁護士会所属)

奨学金を返せない時は自己破産ができる?

現在、日本では多くの学生が奨学金を利用しています。

日本の奨学金は、卒業後に返済をしていく貸与型が一般的です。

ただし、卒業後に就職をして返済をしていく予定だったものの、何かしらの理由で奨学金の返済が困難になってしまうケースもあるでしょう。

返済ができなくなっても、借りた奨学金が消えるわけではありませんし、返済できないからといって放置をして良いものではありません。

どうしても奨学金の返済が困難な場合、自己破産をして解決することが可能です

自己破産とは、借金返済が難しい状態の人が、マイナスの財産(借金)も一定のプラスの財産(預金など)もゼロにすることができる手続きです。

奨学金も借金のひとつになるため、裁判所に自己破産を申し立てて免責許可が下りれば、返済義務はなくなります

自己破産という言葉だけを聞くと、人生の終わりかのようにイメージされる方もいらっしゃると思いますが、自己破産は借金に悩む人のために国が認めた法的な救済方法で、自己破産をしたら何もかも失ってしまうわけではありません。

自己破産をすることで処分することになる財産もありますが、生活に必要なものなどは基本的には残せます。

奨学金返済がどうしても厳しい場合や、すでに滞納をしている場合などは、自己破産という解決手段も選択肢として頭に入れておくとよいかもしれません。

奨学金の返済を滞納するとどうなってしまうのか?

もしも、奨学金の返済を滞納してしまうと、どのような事態になるのでしょうか?

滞納をしたらすぐに財産を差し押さえられてしまうことはありません。

ただし、滞納を続けると事態はどんどん悪化してしまいます。

こちらでは奨学金の返済が滞ってしまった場合に起きることを3つに分けて解説していきます。

文書や電話による督促が来る

奨学金の返済日に引き落としができず、しばらく滞納すると督促の書類や電話が来ます。

また、場合によっては自宅などへの訪問による督促が行われることもあります(ただし、自宅などへの訪問の際に、その場で直接現金徴収することはありません)。

奨学金を滞納して1週間~2週間ほど経つと、奨学金の契約者に電話連絡があるでしょう。

電話による督促は、平日、休日ともに9時~21時の間にかかってきます。

その後、書面による督促も発生します。

また、事前に奨学金の契約者が承諾していたり、電話番号の登録がないなどの理由で他の連絡手段がなかったりすると、勤務先に電話が入ることもあります。

その際の督促は日本学生支援機構の担当者か、督促業務を委託された債権回収会社の担当者から連絡がきます。

延滞金が発生する

奨学金の返済を滞納したら、延滞金が発生します。

延滞金は下記方法で計算します(日割り計算の場合)。

滞納金額×延滞金利÷365日×滞納した日数

奨学金の返済を滞納すると、計算された延滞金を含む通知が「奨学金返還の振替不能通知」に記載されて届くことになります。

上記の計算式を見ても分かるように、滞納をすればするほど延滞金は膨らんでしまいます。

滞納を放置しないよう注意が必要です。

保証人に請求が行くことがある

奨学金の申込みの際、父母や親族等を保証人や連帯保証人とすること(人的保証制度)があります。

その場合には、滞納した影響は保証人にも出てきます。

理由は、奨学金などの債権者側(お金を貸す側)は、契約時に主債務者とは別に連帯保証人や保証人をつけて、万が一、主債務者の支払いが滞っても、連帯保証人や保証人から貸したお金の請求と回収ができるようにしているからです。

このため、連帯保証人と保証人には奨学金を借りた本人と同じ支払い義務が発生し、本人が滞納した場合には、連帯保証人や保証人に支払い義務が発生します。

【関連記事】
奨学金の返還金が用意できなかったり、返済日を忘れたりして、奨学金を延滞するとどうなるのでしょうか?

奨学金を返せない時に利用できる救済制度

奨学金の返済に困った場合、まずは救済制度の利用を検討するとよいでしょう。

日本学生支援機構では、どうしても返済が困難な状況に陥ってしまった方の救済措置として3つの制度を設けています。

ここでは3つの制度の説明と、制度を利用しても返済が困難な方の対処法について解説していきます。

減額返還制度(返済額を減額してもらう)

奨学金の月々の返済金額を減らす方法を減額返還制度といいます。

これは、奨学金の返済を延滞していない人が利用できる制度です。

1度の申請で1年間の減額が可能となり、最長で15年間まで減額することができます。

制度の申込みには、申込書と必要証明書の提出が必要で、減額返還制度の適用には一定の要件があります。

返還期限猶予制度(返済期限の先延ばし)

減額返還制度を利用しても返済が困難な場合、返済自体を先延ばしにできる制度があります。

これを返還期限猶予制度といいます。

1回の申請につき1年間の猶予が認められ、通算10年間まで返済期限を延長することができます。

猶予期間中の利息や保証料、延滞金が返済予定総額に加算されることもないため、奨学金の返済予定総額は変わりません。

経済困難を理由とした返済期限の先延ばしは、年収300万円以下であれば申請が可能です。

返済を免除されることもある

奨学金の返済自体が免除される制度もあります。

制度を利用できるのは、下記に該当する場合です。

  • 奨学生本人が死亡した
  • 奨学生が精神もしくは身体の障害により返済できなくなった

該当する場合には、未返済額の全部もしくは一部が免除になります。

債務整理を検討する

ここまでは奨学金を返せない時に利用できる救済制度として、日本学生支援機構にて申請する手続きを説明してきました。

今まで解説した手段以外だと、法的な手段である債務整理を検討するのもひとつの手になります。

債務整理には下記のように種類があります。

債務整理の種類

詳細

任意整理

将来利息をカットして月々の返済金額を減らす方法。

個人再生

借金の金額を大幅に圧縮し、3年~5年で返済をしていく方法。

自己破産

財産を処分する代わりに借金の返済義務をなくす方法。

次は奨学金を借り入れている方が、上記3点の債務整理手続きをした際にどのように解決できるのかを説明していきます。

奨学金の返済で債務整理をするなら自己破産が良い?

奨学金の返済が困難な場合に債務整理をするとしたら自己破産を選ぶべきなのでしょうか?

また、自己破産以外の債務整理の手段を選択した場合はどのように解決していけるのでしょうか?

こちらでは、債務整理手続きごとに、どのような方が適しているのか解説していきます。

借金が奨学金だけだと任意整理は向かない

任意整理とは、裁判所を通すことなく債権者(借入先である日本学生支援機構など)と直接交渉をする手続きです。

将来利息のカットや月々の返済金額の減額などを交渉していくことができます。

しかし、奨学金の返済を任意整理で解決するのは最善策といえないでしょう。

なぜなら、奨学金は任意整理のメリットである将来利息のカットと毎月の返済負担額の減額があまり見込めないからです。

これは、奨学金は金融機関などと比較して金利が低く、もともと長期分割で支払い計画を組んでいることが理由で、任意整理をしてもあまり状況は変わらないでしょう。

また、連帯保証人や保証人を付けていた場合、任意整理をすることによって連帯保証人や保証人へ請求がいくことになります。

そのため、借金が奨学金だけの方だと任意整理は向かないといえます。

奨学金以外にも借入れがあり、他の借金によって奨学金の返済が苦しくなっている場合であれば、任意整理がよいケースもあります。

任意整理は、手続きを行う借入先を選ぶことができます。

奨学金以外の借金を任意整理して返済額を減らすことで、奨学金もその他の借金も返済していけるようであれば、任意整理を検討しても良いでしょう。

家や車を手放したくない場合は個人再生を検討

個人再生(個人民事再生)とは、借金を原則5分の1に減額し、3年~5年かけて分割で返済をしていく手続きです。

個人再生は、借金の減額がされるものの、奨学金の債務整理には最適とはいえないです。

理由は、大幅減額をしても借金の返済義務は残るため、もともと金利が低く長期の返済計画である奨学金には個人再生のメリットがあまり活きないからです。

また、奨学金に連帯保証人や保証人を付けていた場合、個人再生をすることによって連帯保証人や保証人へ請求がいくことになります。

借金が奨学金のみの方だと個人再生で解決することはおすすめできませんが、家や車を手放したくないケースだと、個人再生を検討してもよいでしょう。

自己破産をすれば奨学金の返済義務はなくなる

自己破産とは、裁判所を介して手続きを進める方法で、今ある自分の財産と引き換えに借金をすべてなくすことができる手続きになります(税金や健康保険料の支払いは残ります)。

もちろん、ゼロにできる借金に奨学金も含まれます。

自己破産には借金をゼロにできるメリットの代わりにデメリットもありますが、任意整理や個人再生で返済していくのも難しい方や、複数の借り入れがあり、一旦すべてをなくした状態で生活再建をしたほうがよい方であれば、自己破産は有効な手段であるといえるでしょう。

自己破産をした場合の生活への影響

自己破産をした場合には、生活にはどのような影響が出てくるのか心配な方も多いでしょう。

自己破産という言葉のイメージだけでは、なにもかも失ってしまう手続きという印象を受けるかもしれません。

しかし、自己破産とは借金で悩む人の救済手段として国が認めている手続きになります。

こちらでは、自己破産をした場合に起こる生活への影響(メリットとデメリット)について解説していきます。

借金がなくなる

自己破産をした場合、破産手続きをした本人名義の借金は奨学金を含めてゼロにできます

銀行からの借り入れやクレジットカードの支払いなどの借金もある場合は、これらの返済義務もなくなります。

一定以上の金額の財産は売却することになる

自己破産をすると破産者名義の不動産や一定以上の価値がある財産は没収・処分の対象となります。

たとえば、家や土地、99万円を超える現金、20万円を超える価値を有する財産(預金、車、生命保険、その他宝石などの高価なもの)は没収となります。

ただし、家にあるものがすべて財産として没収されるわけではなく、生活必需品とされる家具や衣類、家電、99万円以下の現金、仕事に必要な器具などは処分されず残せる可能性が高いです。

自己破産をした人もその後の生活があり、生活を保護する観点からこれらは残しておける財産として扱われているのです。

一定期間、ブラックリストに掲載される

自己破産をすると、クレジットカードの利用や新規作成、ローンを組むことが難しくなります

理由は、信用情報機関に自己破産をした事実が事故情報として登録され、いわゆるブラックリストに掲載されている状態になるからです。

この信用情報機関に登録されている期間は5年~10年ほどです。

各種金融機関やクレジットカード会社は、この信用情報の状態を見て融資するかどうかを審査します。

そのため、信用情報機関に登録されている間は、自己破産の事実が金融機関やクレジットカード会社に知られるため、新たなカードの作成やローンを組むことなどができなくなります。

【関連記事】
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一定期間、一部の資格や職業が制限される

自己破産の手続きの際に、制限される職業、仕事があります。

制限される職業

詳細

士業

弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、司法書士など

金融関連業

貸金業者、質屋・古物商、生命保険募集人など

その他職業

旅行業務取扱管理者、警備員、風俗業、廃棄物処理業など

制限される期間は破産開始決定から免責許可が下りるまでの間で、一般的には3ヶ月~半年程度といわれています。

ただし、登録制の職業の場合、手続き完了後に再登録をする必要が出てくるケースもあります。

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自己破産をしたことが官報に掲載される

自己破産をすると官報に自己破産の事実が掲載されます。

官報とは国が発行している機関紙のことで、休日以外は毎日発行されていて官報販売所で売られています。

また、インターネット官報というものもあり、発行されてから30日以内の官報はネットから無料で見ることができます。

自己破産をしたら、破産者本人は借金をゼロにすることができますが、債権(借金)を回収することができなかった債権者(借入先)には多大な影響が出ます。

そのため、自己破産によって債権者である金融機関やクレジットカード会社にとって発生してくる影響を考えて、破産者の情報を重要情報として官報で公開しているのです。

奨学金が返せない方は弁護士にご相談ください

この記事では、奨学金を借りている方で返済に悩んでいる方の解決方法について記載をしてきました。

奨学金の返済が困難になった際には、日本学生支援機構の減額返還制度や返還期限猶予制度などの利用をまず検討しましょう。

もし、制度を利用したとしても返済が難しい場合は任意整理、個人再生、自己破産といった債務整理を検討するのがよいでしょう。

ただし、個人の借入状況や債務整理の方法によってメリットやデメリットも異なります。

まずは、自分の場合はどの解決方法が適しているのか弁護士の無料相談を利用し、解決の糸口を探ってみるのはいかがでしょうか。