年金受給者が自己破産をしたらどうなる?支払いは免除される?

年金受給者の自己破産について

自己破産を検討している方で年金受給中の方にとっては、自己破産をすると年金にどのような影響が出てきてしまうのか心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回の記事では、自己破産をした際の年金への影響について年金の種類別に解説をしていきます。

また、年金受給中の方が気を付ける点や自己破産後の年金の支払いなどもあわせて記載していきます。

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この記事の監修者

弁護士法人 天音総合法律事務所 正木 絢生 (第一東京弁護士会所属)

公的年金は自己破産による影響を受けない

自己破産の手続きをすると、借金がゼロになる代わりに財産の処分も必要になるため、年金も受け取れなくなってしまうのではないかと不安に思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし、自己破産をしても公的年金に対しては影響がなく、引き続き受け取ることが可能です

公的年金とは年金のひとつの種類で、国民年金厚生年金のことです。

この公的年金と厚生年金は、自己破産をしても受給権に影響が出ることはありません。

公的年金の詳細

国民年金

加入者

日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人。

受給内容

老齢基礎年金、障害年金、遺族基礎年金があり、それぞれ受給の条件は異なります。

厚生年金

加入者

厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務するすべての人。

受給内容

老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金があり、それぞれ受給の条件は異なります。

なぜ、公的年金である国民年金と厚生年金は自己破産の影響を受けないで受け取ることができるのでしょうか?

理由は、公的年金は受給者の生活に必須のものと考えられていて、自由財産に該当するからです。

自由財産とは、自己破産をしても破産者の生活を保護するために処分せず所持が認められている財産のことです。

自由財産には新得財産と99万円以下の現金と差押禁止財産があります。

このうち、公的年金は新得財産と差押禁止財産に該当し、自己破産をしても処分対象とならず、また受給資格がなくなることもありません。

自己破産時に処分対象にならない自由財産一覧

自由財産

内容

新得財産
(破産法34条1項)

破産者が破産手続開始後に新たに取得した財産のことです。

差押禁止財産
(破産法34条3項2号)

差押えをすることができない財産のことです。
差押禁止動産と差押禁止債権があり、差押禁止動産は生活必需品など、差押禁止債権は生活していくうえで必要な債権をさします。

99万円以下の現金
(破産法34条3項1号)

99万円以下の現金ことで、銀行等の預金や貯金などは含まれません。

私的年金のうち、個人年金は処分する場合がある

自己破産をしても公的年金である国民年金と厚生年金は処分対象にならず、差し押さえられないですが、私的年金は差し押さえられるなどの影響を受ける可能性があります

どのようなケースで差押えの可能性が発生するのでしょうか?

そもそも、私的年金には企業年金個人年金があります。

企業年金は企業が用意する年金の種類で、個人年金は個人が生命保険会社などと契約する保険で、個人年金は処分しなければならない場合があります。

私的年金詳細

企業年金

加入者

企業に勤めている個人

受給内容

退職金代わりに積み立てる年金で、確定拠出年金や確定給付企業年金があります。
勤務先で企業年金制度が採用されていると企業年金の積み立てを行い、将来、年金形式で退職金を受け取れます。

個人年金

加入者

個人

受給内容

民間の生命保険会社などと個人が直接契約し、保険料などを積み立てて受け取る年金。
契約内容や積立金額によって受給できる金額も異なります。

企業年金は影響を受けない

自己破産をした際の企業年金への影響をもう少し詳しく見ていきましょう。

企業によって退職金制度の代わりに導入している確定給付企業年金や確定拠出年金は、差押禁止財産となっていて、財産処分対象にもならず受給資格がなくなることもありません。

差押禁止財産とは破産者の生活を保護する観点から、自己破産をしたとしても差し押さえが禁止されている財産のことです。

確定給付型企業年金

確定給付企業年金とは、将来受け取る年金額が確定しているタイプで企業が掛け金を支払います。

受給予定金額に不足が生じた場合は企業が補填をします。

確定拠出型企業年金

年金受給者の拠出する金額が確定しているタイプの年金で企業が掛け金を支払います。

将来受け取る年金額は確定しておらず、運用次第で年金額が変わります。

運用がうまくいけば高額な年金を受け取れますが、失敗すると少なくなる可能性がある制度です。

また、確定拠出年金には個人型のものもあり、個人型確定拠出年金(iDeCo)と呼ばれています。

個人型確定拠出年金は個人が掛け金を支払います。

この個人型確定拠出年金であっても、差押禁止財産にあたり処分せずに済みます。

個人年金は、解約返戻金が20万円を超えると処分対象

個人年金は自己破産の際に差し押さえの対象となります。

そのため、自己破産をすると生命保険の解約返戻金などと同様に強制解約・換価されてしまいます。

なぜ、個人年金は差し押さえの対象となってしまうのでしょうか?

理由は、個人年金はあくまでも個人の財産であり、生活に必要な最低限の資産としては考えられていないからです。

個人年金とは、個人が生命保険会社などと契約をして積立実施をする年金のことです(個人年金保険とも呼ばれます)。

個人年金保険は、予定した年数分の積立完了時や予定した年齢に達した際に年金を受給できるというものです。

個人事業主や自営業の人などで公的年金である国民年金だけでは将来が不安という方が加入しているケースが多いのが特徴です。

ただし、必ずしも個人年金だからといって全額が処分対象になるわけではありません。

自己破産の際には破産者の生活保護の観点から、必要最低限の資産は残せることになっており、地方裁判所によっても多少の差はありますが、個別の財産を20万円までは残せるとされているケースが多いです。

つまり、個人年金の解約返戻金が20万円以下であれば、処分対象とはならず、そのまま加入継続できる可能性が高いでしょう

年金受給者が自己破産をする際に気をつけること

年金受給中の方でこれから自己破産を検討する場合、自己破産手続きの前に必ずチェックしておくべきポイントとして、銀行口座の凍結と年金担保貸付についてご説明いたします。

年金が振り込まれる銀行口座の凍結に注意!

年金を受け取る権利(受給権)は、自己破産でなくなることはありませんが、年金を受け取っている銀行口座は財産処分の対象となります。

つまり、一旦、口座に振り込まれた年金は、預金扱いになり、預金債権としてほかの財産と同様に処分の対象となってしまうのです

また、もしも年金が振り込まれる口座の銀行から借り入れをしていた場合、自己破産の手続きにともなって銀行口座は凍結されてしまいます。

自己破産の際は、手続きにおいて一旦お金の流れをストップして債務状況の把握をする必要があるため、手続き後は借入先すべての銀行口座が凍結され、クレジットカードの利用もストップします。

当然、銀行口座の凍結中は年金の受け取りや引き出しができなくなるため、生活に多大な影響が出てしまいかねません。

もし、借り入れのある銀行口座と年金受け取りの口座が同一の場合は、自己破産手続きをする前に必ず年金を別の口座に移しておく必要があるでしょう。

なお、年金は現金で受領する方法があり、日本年金機構に希望すると受給者に支払通知書が送付され、受給者は支払い通知書と年金手帳を郵便局に持参すると現金で受け取ることができます。

この方法を取ると、年金が振り込まれた預貯金が差し押さえられることを回避できます。

自己破産をしても年金担保貸付の返済は必要

自己破産の手続きを取ったとしても、返済義務を消すことができないのが年金担保貸付になります。

年金担保貸付は、正確には年金担保融資貸付といい、国民年金や厚生年金を担保に国からお金を借りられる制度のことをさします。

運営は独立行政法人福祉医療機構(WAM)のみで、一般事業者や個人が年金を担保に貸し付けをすることは違法とされています。

年金担保貸付を利用すると、独立行政法人福祉医療機構(WAM)への返済金は年金から天引きされることになります。

この年金担保貸付は、自己破産をしても支払い義務をなくすことができません。

その理由は、年金担保貸付金が非免責債権(返済義務の消えない債権)の一種にあたり、債権は免除されても担保権を消すことはできないからです。

担保権を消すことができないと、自己破産をしても年金を担保に借り入れをした事実に変わりはないため、完済しない限り年金からの天引き返済は続くことになります。

未納の年金は自己破産をしても支払い義務が残る

年金受給前の方で年金の未払いがたまっていたら、その未払い分も一緒に自己破産することはできるのでしょうか?

また、年金の支払いができないことを理由に自己破産をすることはできるのでしょうか?

結論は、どちらもNOです。

自己破産をしても、年金の未払い分は非免責債権の一種となるため、支払い義務が免除になることはありません

また、年金の支払いができないことを理由とした自己破産手続きも、実施することはできません。

もし、未払いの年金があったとしても、遅延の罰金とともに支払わなければならないのです。

自己破産による年金への影響は弁護士に確認

年金受給者でも自己破産をすることはできます。

また公的年金や企業年金は自己破産をしても受給権がなくなることはなく、問題なく受け取りをしていけます。

ただし、その際に年金受取口座がある銀行から借り入れがある場合には注意が必要です。

もし、自己破産を検討している年金受給中の方で、「個人年金に入っていてどうしても残す手段はないか」、「自己破産手続きの前に年金受取において実施しておくべきことを知りたい」などの不安や質問がある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。