小規模個人再生と給与所得者等再生手続きの違いは?

小規模再生と給与所得者等再生

個人再生の手続きには、2種類の手続きがあることをご存知でしょうか?

2種類の手続きとは、小規模個人再生と給与所得者等再生をさします。

基本的には小規模個人再生で実施するケースが多いですが、小規模個人再生ができない場合や給与所得者等再生が向いている(実施できる)人の場合には給与所得者等再生の手続きが取られることもあります。

こちらの記事では、小規模個人再生と給与所得者等再生について、それぞれの特徴や異なる点などをお伝えしていきます。

  • 公開日:

この記事の監修者

弁護士法人 天音総合法律事務所 正木 絢生 (第一東京弁護士会所属)

個人再生の種類

債務整理の中でも、借金の元金自体を圧縮減額して返済計画を組むことができる手続きを個人再生(個人民事再生)といいます。

この個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の方法があり、それぞれの特徴は下記のとおりとなります。

小規模個人再生と給与所得者等再生の特徴

小規模個人再生

給与所得者等再生

申請条件

・個人の債務者であること
・今後支払い不能に陥る可能性があること
・将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあること
・債務(住宅ローンその他担保権の付いた借金を除く借金)の総額が5000万円を超えないこと

・個人の債務者であること
・今後支払い不能に陥る可能性があること
・将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあること
・債務(住宅ローンその他担保権の付いた借金を除く借金)の総額が5000万円を超えないこと
・給与所得などの変動幅が少ない安定収入があること
・過去7年以内に個人再生手続きの認可などがあった場合には2回目の実施はできない

再生計画案

・債権者の不同意が一定要件を超えないことが必要
・書面決議で不同意が、議決権者総数の半数未満で、かつ、その議決権額が議決権額総額の2分の1を超えなければよい

・債権者の同意は必要ない

弁済期間

・原則3年間の分割払いで返済
(最長弁済期間は5年)

・原則3年間の分割払いで返済
(最長弁済期間は5年)

最低弁済額

・最低弁済基準による金額もしくは、清算価値総額のうち多い金額となるもの

・最低弁済基準による金額もしくは、清算価値総額もしくは法定可処分所得2年分の金額の3つのうち1番多い金額となるもの

上記のように、基本的な手続きの内容に違いはありません。

ほとんどの項目において、小規模個人再生と給与所得者等再生は共通しています(それぞれの手続きについて詳しくは後述します)。

ただし、異なる点がいくつかあります。

申請条件にある所得条件

給与所得者等再生は、継続的に、または反復して収入を得る見込みがある方のみ申請が可能です。

再生計画案への債権者の同意

小規模個人再生は、不同意議決権者が半数未満で、かつ、その額が議決権額総額の2分の1を超えないことが必要です。

最低弁済額の出し方

給与所得者等再生は法定可処分所得の2年分も加味して最低弁済額を計算します。

小規模個人再生とは

個人再生手続きをする場合、基本的には小規模個人再生を選択することになります。

小規模個人再生の申請には、「将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあること」が定義されておりますが、安定した収入があれば、この要件はクリアできます。

自営業者や年金生活者などでも大丈夫です。

小規模個人再生をした場合の返済総額

小規模個人再生をしたら、最低弁済額と清算価値総額の2つを比較して高いほうを原則3年かけて返済をしていくことになります。

最低弁済額と清算価値総額についてご説明します。

最低弁済額

借金総額

最低弁済額

100万円未満

借金総額

100万円以上500万円未満

100万円

500万円以上1,500万円未満

借金総額の5分の1

1,500万円以上3,000万円以下

300万円

3,000万円超5,000万円以下

借金総額の10分の1

最低弁済額とは、債務者が抱えている借金の総額に応じて定められている最低返済額のことです。

表のように100万円未満の借金は減額することができません(100万円以下で個人再生をするメリットがないということになります)。

100万円以上であれば借金を減らすことができ、100万円以上500万円未満の場合には100万円にまで借金が圧縮されます。

たとえば借金を400万円抱えていれば、借金を100万円まで減額圧縮できるというわけです。

清算価値額

清算価値額とは、個人再生をする人が所持している財産を処分した場合に得られる金額のことをさします。

たとえば預金と車を所持していて、車を処分し、預金と合わせた金額が150万円だとしたら、清算価値額は150万円となります。

預金、住宅、車、株などの有価証券、保険の解約返戻金、退職金などが清算価値の対象となりますが(退職金は見込額の8分の1、退職が確定している場合は受取額の4分の1を清算価値に計上します)、清算価値に含める財産については、各地方裁判所によっても扱いが異なります。

小規模個人再生を行う場合、借金の減額は以上のように最低弁済額と清算価値額によって決まります。

借金総額が400万円だとしたら、最低弁済額は100万円、清算価値額は150万円となり、清算価値額のほうが高額のため、個人再生によって借金は150万円に減額されます。

小規模個人再生ができない場合

小規模個人再生と給与所得者等再生との大きな違いとしては、今後の返済スケジュールである再生計画について、債権者の過半数の同意が関係することと言えるでしょう。

小規模個人再生は、債権者の頭数の半数以上が反対しないだけではなく、その額が議決権者の議決権総額の2分の1を超えないことも必要になります。

このことについて、例を挙げてご説明します。

下記のように、5社から合計400万円の借り入れをしていたとします。
A社:120万円
B社:100万円
C社:80万円
D社:50万円
E社:50万円

まず、頭数の半数以上の不同意がないことが必要ですので、上記5社のうち、3社以上の不同意回答がないことが必要です。

また、議決権額総額の過半数とは、上記のケースでは200万円以上となります。

そのため、C社、D社、E社が同意し、A社、B社が反対をした場合、不同意債権者の頭数は半数未満となりますが、不同意2社の債務総額は220万円となり、議決権額総額の過半数を超えます。

このようなケースでは、小規模個人再生の手続きが行えません。

もっとも、小規模個人再生の際の再生計画においては、反対する債権者よりも同意してもらえる債権者が多いです。

同意をしてくれないケースとしては、債務総額のうち1社からの借り入れが極端に大きいケースや、国民政策金融公庫など国からの借り入れの場合は同意を得られないケースもあります。

給与所得者等再生とは

個人再生の2種類のうち、給与所得者等再生とは、将来的に安定した収入があり、収入に変動幅が少ない方が認められることがある手続きです。

この給与所得者等再生手続きの特徴や返済額についてご説明をします。

給与所得者等再生は安定収入が条件

給与所得者等再生は「将来の収入が安定していること」が条件で、サラリーマンであれば認められる可能性がありますが、自営業者など所得が給与所得ではない方は収入が安定していても申請できないケースがあります。

なお、収入の安定については、一般的には「過去2年間の所得の変動率が、おおむね20%以内におさまっていること」と定義されています。

債権者の再生計画への同意は必要ない

給与所得者等再生は、今後の返済計画について債権者の同意を得る必要はありません。

小規模個人再生の場合には、不同意議決権者が半数未満で、かつ、その額が議決権額総額の2分の1を超えないことが必須ですが、給与所得者等再生では必要ありません。

債権者からの同意が必要なく減額手続きが進行できるのは、給与所得者等再生手続きを行う際の大きなメリットといえるでしょう。

給与所得者等再生手続きをした場合の返済総額

給与所得者等再生手続きをした場合の返済額は、最低弁済額、清算価値額、法定可処分所得の2年分という3つの条件のうち1番金額が高くなるものが返済額として設定されます。

最低弁済額と清算価値額については小規模個人再生をご説明した際に触れていますので、そちらをご確認ください。

法定可処分所得の2年分は、下記のように計算します。

可処分所得=収入-税金(所得税・住民税・社会保険料)-必要最低限の生活費

上記のように、収入から税金と必要最低限の生活費を除いたものが可処分所得となり、この可処分所得の2年分(24ヶ月分)が用いられます。

必要最低限の生活費は、生活保護などの支給額を基準に計算されるため、給与所得の多い方の場合には可処分所得も多くなります。

どちらで個人再生するべき?

小規模個人再生と給与所得者等再生とでは、どちらのほうがメリットがあるのでしょうか?

結論を申し上げると、基本的には小規模個人再生で手続きを進めることをおすすめします。

理由は、小規模個人再生と給与所得者等再生では、将来の返済額(減額できる金額)が大きく変わる可能性が高いからです。

小規模個人再生は、最低弁済額と清算価値額を比較して大きいほうを3年かけて返済していけばよいですが、給与所得者等再生の場合には最低弁済額と清算価値額に加え、可処分所得の2年分も比較することになります。

この際、可処分所得の2年分が一番高額となり、借金をあまり減額できないケースが多くあります。

小規模個人再生と給与所得者等再生で100万円単位で金額差がでることも珍しくありません。

そのため、個人再生をする場合には、小規模個人再生を選択するケースがほとんどです。

給与所得者等再生を選択するのは、小規模個人再生を行っても債権者から同意を得ることが難しいケースです。

同意を得るのが難しいケースとしては、1社から債務額の過半数以上の金額を借り入れしている(おまとめローンを利用していて1社の債務額が大きい)、もしくは個人再生の再生計画に反対をする可能性があると言われている債権者から借り入れをしているケース(国民政策金融公庫や信用保証協会、公務員の共済組合など)が想定されます。

このようなケースでは、給与所得者等再生手続きにて手続きを進めるほうが良いといえるでしょう。

個人再生の相談は天音総合法律事務所まで

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2つの種類があることがお分かりいただけたでしょうか。

小規模個人再生は、債権者から今後の返済計画を否決されないことが必要という点があります。

いっぽうで、給与所得者等再生には今後の返済計画について債権者の同意は必要ないものの、返済額自体が高額になる傾向があるといえます。

どちらの手続きを選択するにしても、裁判所に提出するための再生計画案の作成や債務状況・収支状況をまとめた書面の作成など、書面作成や資料収集が多く専門的な知識も求められます。

そのため、個人再生をご検討されている方は借金問題に詳しい弁護士に相談をして進めることを強くおすすめします。

天音総合法律事務所では、債務整理のご相談を数多く受けており、個人再生の実績も豊富にあります。

「個人再生手続きについて知りたい」、「自分は個人再生できるのだろうか?」など抱えるお悩みに即してアドバイスいたします。

おひとりで悩まず、まずはお気軽にご相談ください。下記の「借金の減額診断」からもご相談いただけますので、お気軽にご利用ください。

【関連記事】
個人再生の費用の目安や、現時点で払えない場合の対処法を解説