交通事故後の生活費に困ったら内払いを活用。慰謝料の前払いはできる?

監修弁護士

弁護士法人 天音総合法律事務所 正木絢生 (第一東京弁護士会所属)

  • 公開日:
交通事故後の生活費に困ったらやっておきたいこと

交通事故の被害に遭われた方の中には、ケガでしばらく会社を休む必要が出てくる人や、ケガをしたことによって支出がかさんでしまう人も少なくありません。
そうなると、生活費に困るケースも考えられるでしょう。
しかし、交通事故被害による慰謝料をあてにしていると直近の生活に影響をおよぼす可能性があります。慰謝料は事故直後に支払われるわけではないからです。
では、どうすればよいのでしょうか?
こちらの記事では、交通事故後の生活費に困った際の対処について解説していきます。

慰謝料が支払われるのは示談が成立した後

交通事故でケガをしてしまった場合、交通事故被害の慰謝料が支払われるのは、治療の終了後となるため、慰謝料を請求し、実際に被害者に支払われるまでには時間がかかるケースが多いです。

たとえば、むちうちの場合、治療期間を加味して慰謝料の支払い時期目安を考えると、事故発生から半年~1年先に慰謝料が支払われるというケースも少なくありません。

重度の後遺障害が残る場合は、それだけ治療期間もかかり、症状の治り具合を経過観察する必要が出てくるため、数年後になって慰謝料が支払われることもあります。

しかし、慰謝料が支払われるのを待っているだけだと、交通事故によって収入に影響が出たり、生活費がかさんだりして交通事故後の生活が厳しくなる場合があります。

そのような際は、制度などを利用して生活費の補填をしていくことが可能です

これからご説明する示談前に利用できる制度(方法)をかんたんにまとめました。

制度(方法) 詳細
仮渡金 自賠責保険において慰謝料の一部を前倒しで受け取れる制度。
内払い すでに発生した損害を相手方の任意保険会社に請求して支払ってもらう。
人身傷害保険 自分が加入する自動車保険に治療費や休業損害などを請求して支払ってもらえる。

下記で詳しく説明していきましょう。

仮渡金の請求(11日以上治療をした場合に可能)

交通事故の被害に遭いケガをしてしまったとしても、仮渡金を活用すれば治療中の経済的な負担を減らせるでしょう。

仮渡金とは、交通事故の損害額が確定しない段階であっても慰謝料の一部を前倒しでもらえる、交通事故の被害者を救済するための自賠責保険の制度です。

交通事故によるケガで11日間以上治療を受けた方であれば、仮渡金を請求できます。

仮渡金を請求ができるのは1回のみで、受け取れる金額は下表の通り法律で決まっています。

また、最終的に支払われる慰謝料の一部を前倒しで支払ってもらうという性質のため、後日正式に慰謝料の金額が確定したら、相手方保険会社は仮渡金を控除した分の慰謝料を支払うことになります。

滅多にありませんが、万が一、賠償金の金額が仮渡金の金額を下回る事態になれば、差額は返還する必要が出てきます。

仮渡金の金額(自賠責法施行令5条)

被害者の状態 受け取れる金額
死亡 290万円
重大な傷害
(14日以上病院に入院かつ治療30日以上を要する場合)
40万円
中程度の傷害
(入院14日以上もしくは治療30日以上を要する場合)
20万円
軽度の傷害(治療11日以上を要する場合) 5万円

仮渡金は被害者の状態別に事前に金額が定められていて、損害算出の必要がなく、申請さえすれば比較的短期間で支払いをしてもらえる制度になります。

仮渡金の請求で必要な書類

  • 支払い請求書
  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 医師の診断書
  • 印鑑証明書

仮渡金の請求に必要な書類はそれほど多くなく、書類を用意して相手方の自賠責保険会社に直接請求を行うと、1~2週間程度で仮渡金が支払われます。

また、請求に必要な書類は保険会社に用意されているので、自賠責保険の担当部署に電話をして必要事項を伝えた上で郵送にて取り寄せをすることもできます(書式の用意を本人で行えるなら、保険会社の担当部署に連絡をしなくてもよいです)。

内払いの請求

交通事故でケガをした際に、損害の全額が確定していなくても、すでに発生した損害分を加害者の保険会社に請求して支払ってもらえることがあります。

これを保険会社による内払いと言います。

内払いは、制度として確立している仮渡金や、人身傷害保険等と違い、あくまでも保険会社がサービスとして提供しているものになるため、請求しても認められない可能性がありますが、支払いの回数に特に制限はありません。

どのような損害費目を払ってくれるかも保険会社次第ですが、慰謝料(の一部)や休業損害を払ってくれることが多いです。

内払を請求する際に必要な資料は保険会社次第で、慰謝料を請求する場合には特に資料等を要求されないこともありますが、休業損害を請求する場合には勤務先による休業損害証明書の提出を求められることも多いです。

なお、お金を受け取れる時期は、保険会社次第ではありますが,概ね書類提出から1週間~1ヶ月前後です。

内払いも仮渡金と同様に、損害賠償金の前払いであるため、示談成立後に確定した損害賠償金から内払い分が差し引かれることになります。

人身傷害保険から保険金を受け取れることも

示談より前に自分の自動車保険から保険金を受け取れる方法

事故被害に遭った本人が契約中の自動車保険に人身傷害保険をつけている場合、示談より前に自分の自動車保険から保険金を受け取ることができます。

人身傷害保険では、治療費の支払いや休業損害、後遺障害が残れば後遺障害慰謝料や逸失利益の支払いを受けることができます。

受け取れる金額は,人身傷害保険会社との契約内容により若干異なりますが、基本的に裁判基準で相手に請求した場合に比べて低額ですので、差額は相手に請求する事になります(人身傷害保険から受け取ったお金は基本的に示談時に受け取る金額から差し引かれます)。

同様に、搭乗者傷害保険をつけていると、自動車保険から保険金を受け取ることができます。

搭乗者傷害保険では、入通院の日数やケガをした部位、症状ごとに決められた金額が支払われます。

搭乗者傷害保険から受け取ったお金は、示談時の最終支払い額から差し引かれることはありません。

こちらでは人身傷害保険を使える条件やその後の保険料について解説していきます。

人身傷害保険が使える条件

交通事故被害に遭い傷害を負った本人の自動車保険にオプションでつけているケースや、家族の保険でも使用できるケース、または乗っていた車の契約者が加入していれば使えるケースもあります。

人身傷害保険を利用するケースとして以下が考えられます。

  1. 入通院が長引き、医療保険等でカバーできない
  2. 過失割合等で見解の隔たりが大きく、相手保険会社が一括対応をしてくれない
  3. 後遺障害が残り、長期に渡って通院や治療、介護が必要になる
  4. 事故の相手から、慰謝料が支払われるまで時間がかかる

また、自動車保険の契約者本人だけではなく家族まで補償ができるタイプや、車に乗っていない場合でも自動車事故に遭えば補償されるタイプ、契約の車に乗っていない事故でも対象になるタイプなど、契約内容によって補償範囲が変わります。

自分が加入する人身傷害保険の補償対象でわからないことがあれば、加入している自動車保険会社に問い合わせてみましょう。

人身傷害保険を使うと保険料はどうなる?

人身傷害保険の利用のみであれば、その後の保険料に影響は出ません

通常は自動車保険を利用すると、保険契約の等級がダウンし、翌年度の保険料は上がることになります。

また、事故を起こすと事故あり等級が適用されて無事故の場合よりも割引率が下がることになります。

しかし、自動車保険の人身傷害保険のみ利用した場合は、等級が下がりません(人身傷害保険と同時に対人賠償や対物賠償、車両保険などを利用した場合には等級が下がる点は注意が必要です)。

慰謝料の一部を先払いしてもらうことは可能?

交通事故被害に遭い、経済的なダメージも受けた場合は、慰謝料をいちはやく受け取り生活を立て直したいというケースもあるでしょう。

その場合、慰謝料の一部を前倒しで受け取ることができる場合もあります。

こちらでは、示談金の先払いについて解説していきます。

損害額が明確なものを先払いしてもらう

慰謝料の金額は治療が終了しないと分かりません。

また、後遺障害が残りそうなケースであれば、慰謝料の金額が分かるのは治療終了後の後遺障害の申請の結果が出るまでは分からないでしょう。

そのため、加害者の保険会社に請求する全体額は、治療が終了、もしくは後遺障害の等級が確定するまでは判明しません。

しかし、治療途中や後遺障害等級の認定を待たなくても金額がわかる損害もあります。

たとえば、治療費や交通費は実費であり、休業損害についても収入がなくなっていることが明らかな状況といえます。

このような損害は、前倒しでの支払いも比較的認められやすい傾向にあります。

ただし、示談を急いでいると見られて、相手保険会社に示談交渉にあたって足元を見られる可能性がありうることには注意が必要です。

制度を活用し、事故後の生活費の負担を最小限にしましょう

交通事故に遭った場合に、心身ともに苦しい状況に陥ってしまうだけでなく、金銭面でも苦しい状況にならないよう、各種制度のいずれかを利用するとよいでしょう。

ただし、どの制度にも注意点や利用できる条件などに定めがあります。

自分のケースであればどの対応をして生活の補填をしていくのがよいのか悩む場合は、弁護士への無料相談を活用し、アドバイスをもらうことをおすすめします。