後遺障害12級の認定基準と慰謝料の相場。示談交渉でいくら増額できる?

監修弁護士

弁護士法人 天音総合法律事務所 正木絢生 (第一東京弁護士会所属)

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後遺障害12級の認定基準と慰謝料の相場

重大な交通事故に巻き込まれると後遺症が残る場合があります。この際に後遺障害等級の認定を受けると後遺障害慰謝料を請求できるようになります。後遺障害12級は下から3番目の後遺障害等級で、交通事故に多いむちうちなどで認定されることがあります。
この記事では後遺障害12級に認定される後遺症、後遺障害12級に認定されたときの慰謝料について確認しましょう。

後遺障害12級の概要

まず、後遺障害12級の概要について確認しましょう。

交通事故でケガをした場合には治療が行われます。

治療の結果、全快すれば良いのですが、ケガの程度によっては完治せず、後遺症が残ることがあります。

このように後遺症が残った場合には、症状に応じて後遺症分の補償も受け取れることになっています。

ただし、後遺症が残ったら必ず補償が支払われるのではなく、後遺障害等級の認定を受ける必要があり、後遺障害等級の認定を受けると、後遺障害慰謝料逸失利益を請求することができます。

この2種類の補償は、認定された後遺障害等級によって金額が決まるため、後遺症が残った事故被害者にとっては何級が認定されるかが重要です。

今回ご説明する後遺障害12級は、14級から数えて下から3番目の後遺障害等級です。

下から3番目とは言っても、腕や足の関節の動きが制限されたり、傷跡などの外見の変化が残ったりと、その後の日常生活に大きな影響を与える後遺症が残ってしまいます

後遺障害12級に該当する後遺症一覧

後遺障害12級は後遺症ごとに1号から14号まで規定されています。

ひとつずつ詳細を確認していきましょう。

後遺障害
12級
概要
1 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5 鎖骨、胸骨、ろっ骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6 1上肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
7 1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
8 長管骨に変形を残すもの
9 1手の小指を失ったもの
10 1手の人差し指、中指又は薬指の用を廃したもの
11 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
12 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13 局部に頑固な神経症状を残すもの
14 外貌に醜状を残すもの

1.1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

交通事故で、一方の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害が残ったものについては、後遺障害12級が認定されます。

調節機能とは、目のピントを合わせる機能のことで、事故で目を負傷し、後遺症によって遠くの物を見る・近くの物を見る際にピントに合いづらくなることがあります。

認定基準である著しい調節機能障害というのは、負傷していない眼と比較して、または、年齢別の調節力と比較して、ピント調節機能が1/2以下になってしまった場合のことをさします。

もうひとつの条件である著しい運動障害は、頭を固定して眼球だけで物を負うことができる範囲である注視野が事故によって1/2以下になってしまった場合をいいます。

2.1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

眼を開けたり閉じたりするまぶたですが、ここに著しい運動障害が残った場合には後遺障害12級に認定されます。

著しい運動障害は、下記のどちらかである場合のことを言います。

  • まぶたを開いた時に目の瞳孔領を完全に覆うもの
  • まぶたを閉じた時に目の角膜を完全に覆えないもの

3.7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

歯科補綴(しかほてつ)とは、歯が無くなったり・著しく欠けたりした場合に、人口の歯で補うことをいいます。

交通事故によって7つの歯以上に対して歯科補綴を加える必要があった場合、後遺障害12級で認定がされます。

なお、歯科補綴が10歯以上の場合には11級が、14歯以上の場合には10級が認定されます。

4.1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

耳殻とは、耳たぶのことで、これの大部分を欠損した場合には後遺障害12級が認定されます。

なお、耳の軟骨部を1/2以上欠損していると、外貌の著しい醜状障害として、後遺障害7級12号に認定される可能性もありますので、どちらに該当するかは弁護士に確認をすることをおすすめします。

5.鎖骨、胸骨、ろっ骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨、骨盤骨に著しい変形を残すと、後遺障害12級に認定されます。

著しい変形とは、裸になったときに外側から見て変形していることがわかる状態のことをいいます。

なお、変形の結果、運動能力に影響しているような場合には、より重度の等級認定がされる可能性があります。

6.1上肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

上肢の片一方の3大関節(肩・肘・手首)のひとつに機能障害が残った場合には、後遺障害12級の認定がされます。

機能障害とは、関節の動く範囲が健側(ケガをしていない側)と比べて3/4以下になった場合をいいます。

また、すぐに関節が脱臼する習慣性脱臼や、関節が治癒しきらずに通常とは違う方向に動いてしまう動揺関節、補助具が必要となった場合も後遺障害12級6号に該当します。

7.1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

片一方の下肢(股関節・膝・足首)の3大関節のひとつの関節に機能障害が発生した場合にも後遺障害12級の認定がされます。

機能障害とは、上肢と同じく、関節の動く範囲が健側と比べて3/4以下になってしまった場合をいいます。

8.長管骨に変形を残すもの

腕や足の長い骨のことを長管骨といい、次の6つの骨がこれにあたります。

  • 上腕骨
  • 橈骨(とうこつ)
  • 尺骨(しゃっこつ)
  • 大腿骨(だいたいこつ)
  • 脛骨(けいこつ)
  • 腓骨(ひこつ)

治療をしても骨がくっつかない、ねじれたり曲ったりしている、骨端部が欠損してしまった、というような場合が、変形を残すものに該当します。

9. 1手の小指を失ったもの

交通事故で手の一方の小指を失うと、後遺障害12級に認定されます。

文字通り小指を切断した場合のほか、骨が欠けていなくても、関節から分断してしまっているような場合もこれに当たります。

10.1手の人差し指、中指又は薬指の用を廃したもの

手の人差し指・中指・薬指の用を廃した場合に、後遺障害12級が認定されます。

用を廃したとは、以下の場合をさします。

  • 指の長さが半分以下になった
  • 第二関節から先の動く範囲が1/2以下になった
  • 指先で温度や痛み・触感などの感覚がなくなってしまった

なお、指が無くなってしまっている場合には、より重度の等級の認定がされます(例:親指以外の2本の手指を失った場合は後遺障害9級)。

11. 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの

足の指の欠損について、下記に該当する場合は後遺障害12級が認定されます。

  • 足の人差し指にあたる指を失った場合
  • 足の人差し指を含む2つの指を失った場合
  • 足の中指から下3つの指を失った場合

12.1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの

足の親指のみ用を廃した、または親指を除く4本の足の指の用を廃した場合に12級が認定されます。

用を廃した状態は親指と、残る4本の足の指で異なります。

親指の場合には、末節骨の半分以上を失ったものです。

残る4本の足の指は、遠位指節間関節以上を失う、もしくは中足指節間関節・近位指節間関節に著しい運動障害を残す場合が該当します。

13.局部に頑固な神経症状を残すもの

主にむちうちの症状をいいます。

むちうちによって、頭痛・しびれ・めまい・耳鳴りなどの症状があり、なおかつ他覚症状がある場合に後遺障害12級13号が認定される可能性があります

他覚症状とは、MRIやCTなどの画像所見、神経学的な検査結果でむちうちの症状が客観的に証明できることをさします。

14. 外貌に醜状を残すもの

頭部・顔面部・頸部など、日常的に露出していることが通常の部位のことを外貌、この部分に醜い痕が残ってしまうことを外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)と呼び、後遺障害12級の認定がされます。

後遺障害12級が認定される外貌醜状には次の3種類があります。

  • 頭部:鶏の卵の大きさ以上の痕や欠損
  • 顔面:10円玉の大きさ異常の痕や長さ3cm異常の線状痕
  • 頸部:鶏の卵の大きさ以上の痕

後遺障害12級で支払われる慰謝料の相場

後遺障害12級での慰謝料の相場について確認しましょう。

3つの基準によって次のような金額になります。

基準 金額
自賠責基準 94万円
任意保険基準 非公表
裁判基準 290万円

自賠責保険基準では94万円

自賠責基準とは、自賠責保険から払われる金額を基準としたもので、後遺障害12級の慰謝料は94万円となっています。

自賠責保険は最低限の補償をする趣旨ですので、相手任意保険との示談交渉でこの金額が提示されていた場合は、後遺障害慰謝料を増額できる見込みがあります。

任意保険基準は自賠責基準よりやや高額

任意保険基準とは、保険会社が交通事故の被害者に対して示談金として示すための計算基準です。

保険会社ごとに独自に設定していて公にはなっていませんが、自賠責保険よりすこし高い金額のことが多いと言われています。

より多くの慰謝料を得たい場合には、後述する裁判基準で交渉をすすめることになります。

裁判基準では290万円

裁判基準とは、裁判をした場合に認定される金額の基準をいいます。

弁護士は事故被害者から依頼をうけると、この基準で相手方と示談交渉をします。

裁判基準では後遺障害12級に認定された場合には290万円となっています。

自賠責基準と比べると約190万円程度の差額が出ることになります。

後遺障害慰謝料の相場は230万円〜290万円

後遺障害12級が認定された際の後遺障害慰謝料の相場は230万円から290万円です。

裁判基準は290万円ですが、示談交渉をすれば、相手保険会社が必ず裁判基準の満額を認めてくれるとは限りません。

示談交渉では、裁判基準の8割から10割の金額まで増額できることが多いため、相場はこの金額となります。

後遺障害慰謝料の相場に関するより詳しい情報は、下記の記事でご説明しています。

後遺障害12級は弁護士への相談がおすすめ

後遺障害12級の詳細や後遺障害慰謝料の相場をお伝えしました。

後遺障害12級に該当するケースや、慰謝料の基準に大きな差があることがおわかりいただけたと思います。

後遺障害が認定されたケースでは、逸失利益など争うべき点は多数あり、示談交渉によって受け取る賠償金額が大きく変わり、弁護士費用を差し引いても増額できる可能性が高いです。

後遺障害申請を弁護士が行うこともできますので、一度、天音総合法律事務所までご相談ください。