交通事故で脊柱(背骨)を骨折。変形障害などの後遺障害と慰謝料請求のポイント

監修弁護士

弁護士法人 天音総合法律事務所 正木絢生 (第一東京弁護士会所属)

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脊柱骨折での後遺症と後遺障害等級

体や頭を支える重要な役割を果たしている脊柱。交通事故では、体を打ち付けたことが原因で脊柱に強い衝撃が加わり、骨折などのケガをするケースがあります。
ここでは、脊柱の骨折の治療、変形障害や運動障害などの後遺症で認められる後遺障害等級、慰謝料請求のポイントを順番にご説明していきます。

交通事故で脊柱をケガするケース

脊柱は、いわゆる背骨のことです。脊椎と言うこともあります。
頸椎から胸椎、腰椎、仙骨と尾骨(尾てい骨)までの総称で、全部で26本ある椎骨と呼ばれる骨が1本の柱のように連なっています。
頸椎が頭を、胸椎と腰椎が体を支えるほか、脊髄を守る役割も果たしています。
この脊柱を交通事故によって骨折や脱臼してしまうことがあります。
脊柱や頸椎から仙骨と尾骨まで広範囲に及ぶため、ケガをする箇所はケースによって異なります。
部位を直接打ち付けてケガをすることもありますし、強く尻もちをついた際に胸椎や腰椎に強い衝撃が加わるなど、別の箇所を打ち付けた際に強い衝撃が走り、負傷することもあります。
また、高齢者は骨が弱くなっているため、軽い衝撃が加わっただけで骨折することもあるようです。

脊柱の構造

脊柱の圧迫骨折と破裂骨折

脊柱の骨折には、圧迫骨折破裂骨折があります。
どちらも、脊柱が圧迫されて椎骨を損傷してしまうケガです。
椎骨の中心には円柱状の部分(「椎体」と言います)があり、椎体に押しつぶされるような圧力がかかることで骨折をしてしまいます。
椎体の前方(体の内側)を損傷したら圧迫骨折、前方だけでなく後方も損傷したら破裂骨折となります。

脊柱の圧迫骨折と破裂骨折

脊柱の骨折の症状や治療方法

脊柱の骨折による主な症状は骨折箇所の痛みです。
寝返りを打つ時や起き上がる時は特に痛みが出やすいとされています。
また、脊柱の骨折が原因で脊髄など周りの神経を圧迫してしまうこともあり、これによって痛みやしびれが出ることもあります。
治療方法は、保存療法や手術があり、その後にリハビリを行い、回復をはかります。
保存療法の場合は、コルセットなどを着用したうえで数週間の安静が必要となります
手術の場合は、脊椎固定術という、プレートを入れて脊椎を安定させる手術や、椎弓形成術という、圧迫を改善する手術などが行われます。

脊柱の骨折で認定される後遺障害等級は?

脊柱を骨折したことで残る後遺障害は、大きく2タイプに分けることができます。

  1. 脊柱自体に残る後遺障害
  2. 脊柱の骨折によって周りの神経を圧迫してしまうことで残る後遺障害

脊柱自体に残る後遺障害には、変形障害、運動障害、荷重機能障害があります。
周りの神経を圧迫して残る後遺障害には、脊髄損傷などがあります。
この記事では、変形障害、運動障害、荷重機能障害についてご説明いたします。

脊柱の変形障害

等級 後遺障害の詳細
第6級5号 脊柱に著しい変形を残すもの
第8級相当 脊柱に中程度の変形を残すもの
第11級7号 脊柱に変形を残すもの
  • 「後遺障害等級表(自動車損害賠償保障法施行令 別表第二)」参照。

脊柱の変形障害は、交通事故による圧迫骨折や破裂骨折、脱臼などが原因で脊柱が変形したことで認定される後遺障害です。
本来、脊柱は正面から見るとまっすぐ、横から見るとS字を描いて湾曲して体を支えています。
しかし、脊柱が押しつぶされてしまうと、そのバランスが崩れ、背骨が曲がって前に傾いている状態(専門用語で後彎(こうわん)と言います)や、左右に歪んでいる状態(側彎(そくわん)と言います)になってしまいます。
ご高齢の方に見られる、背中が丸まって身長が低くなった状態も脊柱の後彎です。
脊柱の変形障害は、その程度に応じて、3つの後遺障害等級が設けられています。

椎骨が圧迫されて変形すると、元に戻らないため、レントゲンなどの画像検査などで圧迫骨折が確認できれば、後遺障害11級7号が認定されるケースが多いです。
画像検査で確認ができない場合でも、「脊椎固定術が行われている」、「3個以上の椎骨で椎弓切除術等の椎弓形成術を受けている」のどちらかに該当すれば後遺障害11級7号の認定を受けられます。
後遺障害6級5号と8級相当は、画像検査などで圧迫骨折が確認できることに加え、より専門的な検査を受けて後彎や側彎の程度を確認し、基準を満たすことで認定されます。

脊柱の運動障害とは?

等級 後遺障害の詳細
第6級5号 脊柱に著しい運動障害を残すもの
第8級2号 脊柱に運動障害を残すもの
  • 「後遺障害等級表(自動車損害賠償保障法施行令 別表第二)」参照。

脊柱の運動障害は、頸椎や胸椎、腰椎を動かせなくなったり、可動域(動かせる範囲)が制限されてしまったりする後遺障害です。
等級認定を受けるには、「画像検査などで圧迫骨折が確認できる」、「脊椎固定術が行われている」、「首、肩、腰の筋肉や靭帯に明らかな器質的変化(脊柱のケガが原因の損傷)が認められる」のいずれかに該当する必要があります。
その上で、頸椎と胸椎、腰椎がいずれも動かせない、またはそれに近い状態だと後遺障害6級5号、頸椎または胸椎、腰椎の可動域が1/2以下に制限されていると後遺障害8級2号が認定されます。

脊柱の荷重機能障害で認定される後遺障害等級

等級 後遺障害の詳細
第6級相当 脊柱に著しい荷重障害を残すもの
第8級相当 脊柱に荷重障害を残すもの
  • 「後遺障害等級表(自動車損害賠償保障法施行令 別表第二)」参照。

脊柱の荷重機能障害とは、脊柱が頭や体を支えることができなくなり、常に硬性補装具が必要となった場合に認定される後遺障害です。
「頸椎や腰椎に圧迫骨折があること」、「脊柱を支える筋肉が麻痺していること」、「首、肩、腰の筋肉や靭帯に明らかな器質的変化が認められること」のいずれかが画像検査などで確認できた場合に認定され、頸椎に加え、胸椎と腰椎の両方が該当すれば6級、片方なら8級が認定されます。

脊柱の後遺障害が残った際の慰謝料請求のポイント

後遺障害等級の認定を受けると、後遺障害慰謝料逸失利益の請求を行うことができます。
その際、変形障害のみが認定された場合の逸失利益は、相手保険会社と意見が食い違うことが多いと言われています。
その理由は、運動障害と荷重障害は、後遺障害が仕事などに影響することは比較的想定しやすいものの、変形障害は、「脊柱の変形だけでは仕事に影響しない(影響は少ない)」として、保険会社が逸失利益の支払いを認めなかったり、低額の逸失利益しか支払いを認めようとしなかったりするケースがあるからです。
しかし、保険会社の主張が正しいとは限りません。
過去の裁判例などを見ても、変形障害で後遺障害等級に沿って逸失利益の支払いが認められているケースが多くあります。
保険会社が脊柱の変形障害で逸失利益の支払いを認めようとしない場合は、それを鵜呑みにせず、弁護士のサポートを受けて反論していきましょう。

後遺障害認定や慰謝料請求は弁護士に相談

脊柱のケガでの後遺障害等級の認定や慰謝料請求は、専門的な知識を必要とする場面が多くあります
また、ほかのケガや後遺障害があると、より複雑になり、難しい判断が求められますので、弁護士に相談して手続きを進めていくほうが、良い結果に繋がりやすいです。
天音総合法律事務所では、治療中や後遺障害等級の認定前の事故被害者の方からのご相談にも対応しています。
相談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。